2012年6月9日土曜日

しょほしょぼ : 「大恐慌情報の虚と実」を読む 自由な人たち



以下引用(太字は済印が附したもの)

三橋 
 ・・・日本人はそろそろ各種の勘違いを改めた方がいいと思います。本当の意味での中間層が太くて、それによって成長できる国というのは、世界にもう日本とアメリカしかないんです。あとは強いて言えば台湾で、残念ながら韓国はもうダメです。
 我々はそれが普通だと思っていますが、そうでないパターンで経済成長する国もあり、それはそれで間違いではないわけですよ。それを、たとえばインドでカースト制度はよくないと言ったり、中間層を育てなさいとやるのは、大きなお世話なわけです。無理矢理やっても失敗して、社会がゴチャゴチャになるだけです。中国も、沿岸部の貴族階級と内陸部の植民地の支配下の人たちで完全に分かれてしまっています。

渡邉
 むしろ、あれはあれでいいんじゃないですか(笑い)。

引用終了

 自動車の製造に関しては大分前に「ドイツと日本」と言われていました。両国の方向は必ずしも一致はしないのですが、製品としての自動車の製造能力ではこの二国が勝者で、他国は個性などで勝負をするしかないと。
 その後、フランスやイタリア、アメリカなどもそれなりに頑張っていますので、現在はどう評価されているのかは分かりませんが、「将来を見据えた開発」という点ではまだ二国が先行しているように見えます。


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 三橋氏は、「中間層による成長」の可能性は日本とアメリカ、そして台湾と指摘しています。多分、そうなのだと思います。
 「開発独裁」という言葉がありました。進歩的文化人が韓国や台湾などを批判するのに対して、「独裁体制で経済発展する」という方向性です。
 ウィキペディアで確認したら、記憶と少し違っていたのですが、韓国・台湾の経済成長は「開発独裁」で説明できると思います。
 そして、当時独裁国家である韓国を批判していた人々が、現在は韓国側に立って日本を批判しています。「日本批判」という点で利害が一致しているからなのでしょうが、不思議な光景には見えます。

 話が逸れました。引用に戻ります。

以下引用

三橋
 どの国も同じように中間層を増やすという考え方は、現実的ではないんです。だから、先ほどGDPの百分比で個人消費の割合が減っているというデータがありましたが(済印註:119頁にグラフが載っている)、中国的にはこれが正しい成長なのかもしれません。ひょっとしたら、これ以外ないのかもしれないですよ。

渡邉  
 インドに対してもそうです。日本人というのは、他の国が発展しなくてはいけないという、妙な誤解を持っています

三橋
 その発展というのも、日本的な発展を意味しているので問題なんです。どの国も、日本と同じようなかたちで発展しなければいけないという考え方です。


h.a.m.c.

渡邉
 日本人は海外の貧しい人たちを豊かにさせなくてはいけないと思っているのですが、それが国家として正しいのかといえば、必ずしもそうではありません。たとえば、そのまま穀物を食用にするのに比べ、鳥で六倍、豚で八倍、牛なら十二倍の穀物を必要とする。十二億もいるインド人が牛を食べるようになったら、今の十二倍も穀物をつくらないといけなくなるんです。だから、ヒンズーの牛を食べてはいけないという戒律は、ある意味正しいといえるんですよ。地球の資源がもちませんよ。

三橋
 牛を育てるためには、それくらい膨大な穀物が必要だという話ですね。

渡邉
 だからチキンしか許されていないのでしょう。チキンはその中で穀物消費量が一番少ないんですよ。

引用終了

 「カースト制なんていう前時代的な制度は一日も早く無くすべき」というのが一般の日本人の感覚だと思います。
 小室直樹氏は日本を「斜め社会」と表現したと記憶しています。階級や差別を無くしたため、本来「階級でないもの」で差別観を持って満足するというような話でした。
 例えば、外国だと自分の職業を紹介するのに、営業マンだとか経理だとかを言うのに、日本人は「業界第○位の☓☓会社に勤めている」なんて紹介をするというように、本来差が無いところに「差を付けて」満足感を得るというようなものです。学歴などを含めてこれらは「絶対的な価値」ではないため、日本人はその不安・緊張感に耐えられなくなり、それが今で言うところの"逆ギレ"に繋がるのではないかという分析です。

 これに対してカースト制の下では、現在の境遇は「自分の責任」ではないため、「精神的安定」を得られるというような話だったと思います。


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 今までの学者や知識人は、殆どがマルクス主義・共産主義の影響下にあり、かつ「差別を肯定する」なんていうことは「口が裂けても言えない」という"善良な"人々でした。専門分野では冷静な分析はなされ、それなりの論文があるのでしょうが、少なくともマスメディアがそれを取り上げることは殆ど無かったというか、あまり読んだ記憶がありません。
 これに対して小室氏は「孤高の学者」だったから可能だったし、それが新鮮なため著書がベストセラーになったのでしょう。

 つまり、三橋氏や渡邉氏のような言論は、ついこの間まではマスメディアでは殆ど相手にされない性質のもので、ネットによって一般に発信することが可能になったと言えるものです。そしてそれが書籍として売られる時代が来たということだと思います。
 両氏が大学やシンクタンクのようなものに属していないのが最大の要因だと考えられます。

 もう少し引用します。

以下引用

三橋
 水の問題もありますよね。水も相当使いますから。

渡邉
 極端なことをいえば、これからも国民みんなが充分に食べていくためには、今のままの方が平穏だということもいえるわけです。その方が一人あたりの負担が少ないし、貧しい人たちにとっては幸せでいられる。世界的な穀物の奪い合いに巻き込まれないですむからです。

三橋
 とにかく、世界中が中間層中心の成長をするなんていう甘い夢はやめろと言いたいですね。本当に、そんなことは不可能です。誤解を招くと困りますが、渡邉さんも私も日本の平等主義は好きなんです。国民均質で平均的で。でも、現実問題としてそんな国は世界にほとんどないということをわかってほしいんです。アメリカだって、ものすごい階級社会なんですから。


渡邉
 私は、日本人の間違った幻想を捨てろと言っているんです。それに、一口に発展といっても、先進国にとって儲かる発展をするのか、それとも日本人的に中間層が増えて豊かになるという意味の発展なのか。これによって話はまったく違ってくるんですよ。だから、日本の誤解は一度すべて捨てた方がいい、ということです。

引用終了

 明治維新で日本はキリスト教の布教の自由を認めるとともに、その価値観を取り入れました。そして、アメリカによる現行憲法は自然法思想、つまり「人間は神によって造られたのだから、生まれながらに自由で平等である」という考えに基づいています。多分、それは日本人の感性に合っていたためでしょうが、高度経済成長を経て他国が羨む「社会主義国家」が出来上がりました。「革命を目指す人々」はそれでも不満なようですが・・・。

 その戦後教育の影響を受けている者としては、キリスト教国以外の人々も少なくとも「精神的自由と平等」は享受されるべきだとは思います。
 但し、経済的な面から見るならば、両氏の主張は充分に説得力があるものです。

 民主党のみならず自民党の政治家も、そして知識人と言われる人たちの多くも60年安保・70年安保の影響を受けた世代がまだ中心にいます。
 しかし、両氏はともに昭和44年(1969年)生まれだそうで、70年安保(全共闘時代)を経験していない、その面で「自由な思索」ができる世代です。 これからの日本は三橋氏や渡邉氏のような「自由な人たち」が担っていくというのを痛感したため、長目に引用しました。

 最後の部分は、前にも書いたことがあるような気がしてきましたが、どこで書いたか思い出せません。重複していたらご容赦を・・・。



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